1. 無料アクセス解析

雛○沢住人K1曰く。 "漢が変態で何が悪い、漢はすべからく変態だ"――― "すべからく"は"すべて"と誤用されるが、正しくは"必然的に、当然の如く"いう意味だ。 即ち、"漢(男)は当然の如く変態だ"ということになるのだけど―――今はそこは問題じゃなくて。
問題は―――
「だから小毬のパンチラこそ最高だと言ってるだろうがっっ!!」 「甘いわ、古式のはだけた巫女服姿こそ至高。これは決して否定はさせん!!」 「ふっ、ふっ、ふっ」
問題は、今僕の部屋が、漢の下心渦巻く魔境と化しているという事だ―――
―漢はすべからく変態だ―
事の発端は、"鈴が女らしくなるためにはどうすべきか"だった筈だ。 僕が寮会の仕事を終えて帰ってくると、既に真人の他に恭介と謙吾も来ていて、 「鈴がせめてまともな女の子らしさを身に付けてくれないと安心して卒業出来ねぇ」とか言ってた気がする。 それで初めは女の子らしさについて議論してたのに… 次第にあらぬ方向に話が脱線してしまい、今ではこの有様だ。
「大体な、恭介。神北のパンチラなど、そう珍しいものでもないだろう? 巫女服など滅多に見られない物だからこそ、希少価値があるんだろうに」 「何を言うかっ、アリクイぱんつや苺柄のような子供っぽいものから、薄手のレースや紐パンまで、 あらゆるバリエーションが楽しめるだろうがっ! それに謙吾、お前の方こそ、何故そんなに巫女服にこだわる? 希少価値というならメイド服とかでもいいだろうし、和服であれば別に浴衣とかでもいいんじゃないか?」 「ああ、確かに浴衣もいいものだろう。 しかし紅白2色の単調ながら鮮やかな色合いの巫女服を、古式のように清楚な女性が着るからこそ、 それが着崩れた時に生み出される色気が引き立てられるんじゃないかっ」
嬉々としてそれぞれの"漢の浪漫"をぶつけ合う変態2人。うん、この2人はもう手遅れだ。 恭介、いつからそんなパンツフェチになったのさ。 というか、最近小毬さんと仲いいのは、小毬さん本人じゃなくてパンツが目的だったの? 謙吾は最近は堂々と大真面目な顔していて言動は馬鹿ばっかりで、始末に負えないよ。
「ほう、和服ならアリだがメイドには興味無しか?」 「物によるだろうな。だがメイド服ならば真人に聞いたらどうだ?」
ここで謙吾は、さっきから会話に加わらず1人黙々と筋トレを続けている真人に話を振った。 真人に聞いてみた所で、こんな変態トークに興味があるようには思えないのだけど…。
「だからオレはメイド服なんて別に興味ねえっての、ふっ、ふっ」
鉄アレイを上げ下げする腕を止める事無く、真人が言う。 …流石真人だ、この部屋を支配しつつある変態的オーラにも動ずる気配は無い。
「だがよ、アレだ、割烹着…っつったっけか? クー公があれを着てるのは良いもんだったがな、ふっ、ふっ」 …あれ? 真人が"割烹着"を言い間違ってない!? いや、それは大した問題じゃない。よもや、あの真人が…?
「そうだな、エロい事だったら…、 こないだの雨の時にクー公が傘忘れて大分濡れてたんだがよ、そん時結構エロいな、って思っちまったぜ、ふっ、ふっ」
…何て事だ!! あの筋肉しか頭に無い真人が変態話に加わるなんて…!! 僕も真人の事を見誤っていたようだ。君もやはり1人の"漢"だったんだね…!

「ん、どうしたんだ理樹、何かボーっとしてないか?」 「おっ、そういえば理樹はさっきから何も言ってなかったな、理樹はどうなんだ?」
とうとう僕に矛先が向けられた。 そりゃあ僕にだって"漢の浪漫"の1つや2つくらいあるさ。 だけど今の恭介と謙吾の異様なテンションにそのまま乗るのはちょっと躊躇してしまう。 取り敢えず1つ、気になっていた事を尋ねてみる。
「あのさ、さっきから聞いてると、恭介は小毬さん、謙吾は古式さん、真人はクドの事にしか触れてないけど、 他の人じゃあ駄目なの? 恭介はパンチラにこだわってるようだけど、パンチラなら、あやも何か自爆してよくやらかすよね? 謙吾はさ、古式さんじゃなくて笹瀬川さんの巫女服は考えてない? 真人は、雨に濡れてたのが、例えば西園さんとかだったらどうかな?」
3人とも、これといって誰の事が好きだという話をまだ聞いた事は無い。 だから今それぞれが特定の1人の事にこだわっているという事は、もしかしたら好意を寄せているのかも知れないけど…。
「んな事言われてもよ、西園が雨に濡れるような事するとは思えねえし、 他の連中だってそんな状況でわざわざオレに関わろうとしないだろうよ、ふっ、ふっ」
うん、真人はそんな事だろうと思ったよ。聞いた僕が悪かったよ。ごめんよ真人。
「ふっ、そんなの、萌えがあるかどうかが重要に決まっているだろう? 大抵自虐モードに入る沙耶には萌えが足りない、だが小毬の恥ずかしがる姿には萌える、ただそれだけの事さ」 「笹瀬川はメイド服ならば似合うかも知れんな。だが巫女服にはストレートの黒髪が良く映えるし、着る者も清楚であるべきだ。 だから古式こそ最も適しているんじゃないか。黒髪なら来ヶ谷もそうだが、来ヶ谷じゃ元々の色気があり過ぎる」
…うん、聞いた僕が悪かったよ。やっぱり不純な動機でした。 まあ、こんな理由で好かれたって困るだろうけどね…。
「で、理樹はどうなんだ? 誰の何に惹かれる?」 「そうだぜ理樹、この際だから吐いちまおうぜっ」
…はぁ、仕方ない。僕も腹を括るとしようか。 男は、いや漢はすべからく変態だというのなら、その通りになってやろうじゃないか。
「そうだね、僕は…」
意を決して、他の変態共に向き直る。
「葉留佳さんの私服姿。あの、肩とおへその露出に加えて、タイトスカートと縞々ニーソの間の絶対領域、 そして体のライン、特に胸の大きさが強調されていて、ただの私服にしては相当エロくない?」
ここで一旦切り、皆の反応をうかがう事にする。
「むぅ…。そう言われてみると、確かにエロいかもな…」 「エロいっちゃあエロいかも知れんが、あのデザインはどうかと思うがな?」
唸る謙吾に対して、恭介は懐疑的な様子だ。
「デザインはひとまず置いといてさ、あの露出の多さを無防備にも晒しているのがいいんじゃないかっ!」
どういう意図であの服を選んだのかは分からないけど、 そういう目で見られる事を自覚しているのだろうか? 葉留佳さんならどちらでもありえそうだけど。
僕はさらに畳み掛けることにする。
「じゃあさ、この服を、葉留佳さんだけじゃなくて、 佳奈多さんも着ていたらどう? 葉留佳さんが普通に堂々と着こなしている一方で、あの生真面目で風紀にうるさい佳奈多さんが 羞恥に顔を赤くしながらも、あの肩とおへそを出して、そして胸が強調された格好をしていたら、 かなりそそると思わない?」
今度はどうだ!? 僕ならば、はっきり言ってこのシチュエーションで何も手を出さないでいられるとは思えない! 別に威張って言う事じゃないけど!
「くぅっ…、一瞬心が揺らいじまったぜ…」 「すまぬ古式、俺とした事が気を取られてしまった…」
頭を抱える恭介に、何故か謝る謙吾。これはもしかして、相当なインパクトがあったか? そして残る1人は。
「ちょっとは良いかもなって思ったけどよ、別に好みなんて人それぞれじゃね? ふっ、ふっ」
なんと、真人には大して効かなかったか!? しかもなんか正論言ってるし!?
「…そうだったな、他人の嗜好などどうでも良い、俺には小毬のパンチラさえあればいいんだ!!」 「否、否!! 巫女服だけは譲れん!!」 「パンチラ最高っっ!!」 「巫女服! 巫女服!」
益々ヒートアップしていく部屋の中。いつの間にか皆立ち上がっている。
…今更だけど、こんな変態的な事叫びまくってて大丈夫だろうか? 何かこの光景、いつか似たような事があったような…
ガチャリ。
「理樹君、ドーナツ持ってきまし…」 「小毬のパンチラ最高!! イヤッホウゥゥゥゥ!!!」

一瞬の静寂。 …ああ、そういえば、小毬さんのひいきのドーナツ屋で新作が出たからって、持ってきてくれるんだったっけ…
「う、うわああぁぁぁんん、恭介さんのへんたいぃぃぃっっ」
小毬さんは駆け出していってしまった。ドーナツの袋を持ったまま。
「まっ、まて小毬!! 違うんだ、話を聞いてく…」
何が違うんだろう、と思った束の間。恭介目掛けて1つの影が迫り。
「しねこのクソ変態兄貴!!!」
ドゲシャッッ

彼の妹が、兄の顔面に見事な跳び蹴りを食らわせていた。…恭介、一発KO。 …ああ、これも忘れてたけど、この惨状も元々は、"鈴が女らしくなるためにはどうすべきか"から始まったんだよね… 勢い良く蹴りをお見舞いするのが女の子らしいとは言えそうに無いけど。 でも。一つ言うなれば。
「猫さん柄のパンツは、女の子らしいと言えなくも無い…のかな?」 「なぁっ!?」
瞬時に顔を真っ赤にする鈴。…しまった、口に出していたか!?
「な、何見とんじゃコラぁぁぁっっ!!!」
次の瞬間、側頭部に鋭い衝撃が走る。 薄れゆく意識の中で思った。 ―――猫さん柄じゃ子供っぽいな。鈴にエロさを求めるのは当分先かなぁ…
 



後書き 最初は男キャラを暴走させまくったギャグ話にしてみたかった。一方で恭こま的な話も書いてみたかった。 じゃあいっそ両方の要素を入れればいいんじゃね? ということになった。その結果がこれだよ!!(AA略 気が付いたらこれ恭こまの要素全然無いじゃん! というか恭介→小毬のパンツってだけじゃん!!
…とまあ、ギャグ話を書くに当たっては、キャラ崩壊しすぎてしまってはいけない訳ですが、 各キャラの性格や特性はそのままに、魅力をより引き立てる形で崩す、というのも相当難しいように思います。 あと、ギャグの場合だと、話全体の勢いとかテンポの良さ等も重要かと思うのですが、 どうも今回の話はテンポが良くない気がする…。
まあ結論を言うと、やっぱりギャグ話も色々気を付けないといけない事が多くて難しいですね>< それにしても、これ書くのに半日以上かけるとか、何やってるんだろ俺…

感想・ご意見等ありましたらお願いします。

SStopページに戻る

Blog:無常の流れ

 

inserted by FC2 system